私好みの新刊 202103

『空があるから』 (たくさんのふしぎ20208月号) 福音館書店

 私たちは太陽からの光を受けて様々な恩恵を受けています。太陽の光の

中にはもちろん赤外線もあってそれが地球を暖めている、と思っているの

が普通の感覚なのではないだろうか。ところが地球を暖めているのは、そ

れだけではないという話が簡潔に語られている。

 場面は、わたしたちがいつも見ている空の話から始まる。地球には大空

が広がっている。

大空には空気の層がある。地球で生物が生きておれるのは「空気があり、

酸素と二酸化炭素がバランスよく存在している」からである。ここまでは

ごく普通の話である。

一転して夜空が出る。ここには大気に包まれた地球が描かれている。

次に、宇宙の温度が示される。宇宙はうんと低い270度だそうだ。

地球はその中にあるので、普通なら地球もどんどん冷えてしまう環境に

ある。ここで「なぜ、地球は寒くならないでいられるのでしょうか。」

と問われる。なぜだろうか。それは太陽からの熱エネルギーを受けてい

るので熱くなる、と言いたいところだが・・そうではない。

 じつは、地球自身もどんどん赤外線()を出している。地球は放射性物

質によって熱を出しているからだ。太陽からの赤外線の量と地球が発して

いる赤外線の量を比べると、はるかに地球自身が出す赤外線の量が多い。

地球の放熱量と太陽熱と差し引きすると地球は約18度になるという。

しかし、現実には地球は生物にも適度な温度にバランスを保っている。

どうしてだろうか。地球には熱がにげにくい〈ふた〉の役目をしている

大気がある。誕生当初地球は灼熱惑星だった。やがて地球には海が生まれ、

大気中の二酸化炭素をどんどん吸収した。おかげで地球大気の二酸化炭素

はぐんと少なくなり、地球熱が放出されて地球温度は下がった。地上に風

があることも手伝って地球上の温度は今の適温に保たれるようになった。

今も大気中の二酸化炭素、水蒸気の量が地球温度を左右している。地球大

気の大切な役割がさらりと書かれている。             

 20208 月 700

『岩石・鉱物図鑑』 デヴィン・デニー著 バイ・インターナショナル  

岩石・鉱物の本は数多い。専門的な大人向けの本から子ども向けの本ま

で趣向を変えてさまざま出版されている。一風変わった岩石・鉱物の本

が出たので紹介したい。タイトル文の下に My Book of Rocks and Minerals

と書かれている。そう、英語の文字が添えられている珍しい図鑑だ。岩石

・鉱物界では、英語を日本語にそのままローマ字読みにすることが意外

と多い。ロック、ミネラルなど日本語として通じる。少し岩石・鉱物に

なれてくるとグラニットとかマーブル、ライムスト−ン、クオーツなど

日本語としてもよく耳にする。片や、日本名の漢字には当て字が多い。

そうすると意味が読み取れない岩石もある。そうなると、ただ言葉を覚

えることだけになって岩石・子鉱物に親しみが持てないこともある。

その点、英語読みが併記されているとその石の意味が読み取れることが

ある。砂岩と言えばサンドストーン、頁岩と言えばセェル、雲母と言え

ばマイカ、粘板岩と言えばスレート、ザクロ石と言えばガーネット、と

言うようにその石の意味が読み取れてくる。

最初はRook or mineral?である。岩石と鉱物の違いの解説がある。いく

つも鉱物が集まったのが岩石。次はWhere to find gems。今はなかなか岩

石採集もむつかしいが鉱物店や川原なら遠慮なくできる。続いて

Unearthing minerals。岩石採掘現場の写真が出る。スケールが大きい。

What is a rock?では、火成岩、堆積岩、変成岩の簡単な説明。Granite

(花崗岩)では、黒曜石も見開きで出る。花崗岩と黒曜石を並べて書かれる

のは珍しい。片方は結晶、片方はガラス、どちらも成分は同じだ。岩石の

種類の中にVolcanoes(火山)があるのも面白い。岩石に続いて各鉱物、宝

石の話が続く。

小学生にも読めるよう文字も大きい。子どもから大人まで楽しめそうな

本である。               20207月刊   1800

            新刊紹介3